電子デバイスの普及が加速する中で、半導体は電子部品の作成には切っても切れない重要な存在となっており、近年では半導体の不足が懸念されるほど、製品需要が高まっています。本記事ではその中でも、半導体の最上級系と言われるダイヤモンド半導体について解説していきたいと思います。
ダイヤモンド半導体とは?
ダイヤモンド半導体とは、「合成ダイヤモンド」を用いて作られる半導体のことを指します。この合成ダイヤモンドは炭素を含むメタンガスと水素ガスを原料として生成します。シリコン(Si)という現在のパワー半導体で主流の素材と比較して、ダイヤモンド半導体は高温や高電圧の環境でも稼働が可能です。
ダイヤモンド半導体の特徴について
ダイヤモンド半導体は「パワー半導体の究極形」とも言われ、その特性から主に4つの利点があります。この性質をうまく活かすことで、半導体製品にとって利点になります。
一つ目の特性は、他の半導体素材であるシリコンや炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)と比べて、ダイヤモンド半導体が持つバンドギャップの大きさです。
二つ目、ダイヤモンド半導体は非常に高い絶縁耐性を有しています。
三つ目の特性としては、ダイヤモンド半導体が持つ非常に高い熱伝導性が挙げられます。これにより、ダイヤモンド半導体を使用したデバイスは発熱を効率よく放散することが可能となります。
最後に、ダイヤモンド半導体は高温や高電圧環境でも動作可能で、これは電力変換や電力制御のような用途において非常に重要な特性となります。
ダイヤモンド半導体の用途
ダイヤモンド半導体は電力効率や耐久性に優れているため、幅広い用途で活用することが考えられます。例えば、電気自動車(EV)、廃炉作業、航空・宇宙産業などがその例として挙げられます。
ダイヤモンド半導体の実用化
ダイヤモンド半導体の研究開発は、日本では1980〜2000年代にかけて国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)や産業技術総合研究所(産総研)が進めてきました。そして、2023年に、佐賀大学の嘉数誠教授らのグループが世界で初めてダイヤモンド半導体デバイスでパワー回路開発に成功しました。
ダイヤモンド半導体の課題
ダイヤモンド半導体は非常に優れた性能を持っていますが、それを実用化するにあたっては、いくつかの課題が存在します。その一つが、ダイヤモンドの非常に硬い性質によるものです。電子デバイスに仕上げるための精密な研磨や加工が極めて難しく、特に大型の基板となるとさらに難易度が高まります。
ダイヤモンド半導体を搬送するときにおすすめのコレット
ダイヤモンドは自然界に存在する物質の中で最も硬いものとされています。その硬さはビッカース硬さ試験で113GPaという記録を持ち、これは天然ダイヤモンドのスコア(60~100GPa)を上回る可能性があると言われています。しかし、ダイヤモンドの靱性については必ずしも高いとは言えないとも考えられています。そのため、搬送するときにはゴム製や樹脂製のコレットを選定するといった、衝撃を最小限に抑える工夫を凝らすことによって、製品の破損を防ぐことが出来ると考えられます。
まとめ
ダイヤモンド半導体は、「究極の半導体」とも評されるその優れた性能から、さまざまな分野での活躍が期待されています。現在はまだ開発段階にありますが、今後の進展により課題が克服され、実用化が進むと期待されています。その進展に私たちは注目し続けます。