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プリントはナノ領域、3Dレーザリソグラフィー(TPP)とPμSL

TPP
技術解説 業界|電子製品|3Dプリンター

先進国では一般的に製品の小型化が進められ、2017年時点では手のひらサイズのIoTデバイスが誕生し、現在では衛星のアンテナを3Dプリントするだけではなく、小型化するという側面も兼ね備えて設計、運用されています。

小型化の歴史をたどると、日本では1987年のNTTが携帯電話を発売したことが始まりです。

しかしながら重量は750gという重さで、じゃがいもを4個片手で持ち上げているようなものです。

とても重たくて手が疲れてしまいますね。

その後1993年~1998年に急速に普及した携帯電話が世界で最も小さな電気製品でした。

重さ81gで薄さ18mmと現代のスマートフォンからすると分厚く重たいですが、このときのmovaという機種がとても小さなサイズとして知れ渡りました。

小型化の目的

人はなぜものを小型化したがるのか。これらには単に新しいものを生む基準を人間が作りだし、飽き性な人たちに向けて売っていくという作戦をとっているわけではありません。

確かに前の製品と何か改良されているという違いがあればほしくなる人もいることは事実ですが、そればかりではないのです。

主に企業が目指しているものは、以下の悩みを解決するといった視点です。

  • 携帯性の向上
  • スペースの節約
  • 消費電力の削減
  • ユーザビリティ(使いやすさ)の向上
  • コストの削減

これらは、法人個人問わず、長年気にしている悩みでもあります。

法人が小型化を目指した背景として、ソニーを例に挙げると、大きなものを持ち歩かずに済むこと、発売時に競合がまねできない技術を提供、ほかの市場にも横展開できるように。

このようなコア・コンピタンス(他社にまねできない中核となる能力)を持とうとしたということにあります。

近年携帯性やスペースに関しては、3Dプリンターの登場からだんだんと小型化が進み、改善している傾向にありますが、それ以外の部分ではサイズや形状だけの部分にフォーカスすると、まだまだ課題は残るところです。

現代で小型化が進行している分野

  • ドローン
  • 自動車のバッテリー
  • カメラ
  • センサー
  • 衛星やそのアンテナ
  • 生産設備
  • ロボット
  • IoTデバイス
  • 医療

など、多様な産業の商品で小型化が進行しています。

歯科医療

感染防止の観点から、なかなか口の中をのぞくことに抵抗がある昨今では、口腔内カメラを活用して、モニター越しにドリルで歯を削ってる歯科医療機関もあります。

カメラは約20倍まで拡大でき、肉眼で見るよりも鮮明に治療個所を把握できます。

また、患者自身も歯の治療個所の状態を理解しやすいというメリットもあります。

メガネ屋さん

5年間の研究の上で作成された、小型センサーとバッテリーを眉間と鼻当て部分に搭載することによって、まばたきや目の動き、体の動き、歩行速度を計測できるようにしています。

上記であげたものは両者とも電子部品の小型化の例です。

主に電子部品を細分化すると、次の部分の小型化が必要になっています。

  • 回路部品
  • 接続・変換器
  • 無線通信モジュール
  • センサー

実際のIoT機器は2017年時点で手のひらサイズですから、それぞれの部品が微細であるということが分かります。

小型化の世界的競争率

世界的に注目を浴びている小型製品であるIoTデバイスを例にしていくと、IoT国際競争指標は2020年(令和4年4月に発表)の総務省の統計をみると、日本は移動ネットワーク機器が2019年以降からプラスになっています。

日本国内で販売されているIoT製品の例

IPROSより情報を抜粋するとランキング上位の会社は下記のようになりました。

  1. 株式会社サンテクノ
  2. 旭光電機株式会社
  3. 株式会社アイオーティドットラン

(2023年3月15日引用)

IOTデバイス – 企業13社の製品とランキング – IPROS

製品ランキングは次に通りです

  1. Fiotデバイス(株式会社サンテクノ)
  2. SmartFit-02(旭光電機株式会社)
  3. Tibbo-Pi(株式会社アイオーティドットラン)

主に工具などの人間が扱うような小さなものにも装着できるほど、微小なデバイスです。

着けることによって、活動情報を収集してクラウドで保管します。

ここまで小型化の技術状況についてご紹介してきましたが、このような製品はいったいどうやって生み出しているのでしょうか?

その製品の造形方法には3Dプリントや3Dレーザーリソグラフィー(TPP)といった方法があります。

具体的にはそれらがどんな技術なのかをご紹介していきたいと思います。

3Dレーザーリソグラフィー(TPP)とは

別名で二光子重合とも呼ばれます。非常に小さく、分解能で複雑な三次元の構造のものを作ることが出来る方法です。

10のマイナス15乗(フェムト)秒の領域の高いエネルギーパルスを使って、様々な重合の技術と組み合わせてリソグラフィで形成します。

厳密に光を一点に集めて、レーザービームの強度を単一波長(~1㎛)の小さなレーザースポットに制限できます。

主に感光性材料(フォトレジスト)に光を照射して接合と硬化を行います。

焦点をスキャンすることで、所定の3D構造を前例のない解像度でプリントできます。

TPP方式の3Dプリンターについて詳しくはこちらをご覧ください。

プロジェクション・マイクロ・ステレオリソグラフィー(PμSL)とは

弊社の3Dプリンターの光造形技術であり、DLPの発展版のプリント技術です。

基本的には投影型光源を利用した造形方法の応用技術で、材料に紫外線を当てながら硬化させていきます。

先進医療器具を造形できるため、高い精度が求められる小型デバイスを作る時に力を発揮します。

PuSLについて詳しくはこちらを参考にしてください。

TPPとPμSLは何が違うの?

どちらもマイクロナノの光硬化3Dプリント技術で、低コスト、高効率、設備もシンプル、幅広い材料が適応できます。同じ精密加工という点では共通するところが多い技術なのですが、呼び分けているということは何かが違うはずですよね。

主にどちらも光を利用しますが、利用する波長がどこを使っているのかというところが肝になってきます。

TPPは~1μmの単一波長ということで波長の幅が非常に広く、長い波長をつかえます。

PμSLは波長405nmの紫外線LEDを光源としていて、これは一般的な光造形で使われるレジンも共通です。

短い波長は固体への浸透率が非常に高く、より複雑な構造を構成できますが、その範囲は限定されているものです。

しかしながら、実際のプリントサイズについてはTPPのほうが小さく、PμSLのほうが比較的大きなものまで造形できます。

TPPはかなり狭い範囲で、ナノスケールプリントをすることに特化していると言えます。

PμSLはナノレベルでの加工精度は実験段階では達成できていますが、製品化までを評価対象とすると、マイクロスケールレベルが妥当というのが現状です。

TPPはそのようなナノレベルまでも製品化に及ぶほどの精度を誇っています。

しかしながらPμSLにも強みはあります。

TPPプリントは赤外線フェムト秒パルスレーザーを光源として使用しています。

フェムト秒パルスレーザー設備は高価で、かつ時間とともに減衰するというデメリットがあります。

ところがPμSLの光源寿命は40,000時間と非常に長く、蛍光灯の約6,000~12,000時間(1日8時間使用する場合、約2年~4年1ヶ月点灯する計算)という時間に匹敵するほど長く使えます。

低コストでかつ、人体に影響を及ぼさないレベルの医療器具を、作ることに使えるものを目指すというのであれば、長持ちもするので強い味方になります。

PμSLの工業用アプリケーション例

  • 内視鏡
  • 眼圧下降ステント
  • コネクタ

小型化はどこまで進行するのか

ソニーの方針にあるように、とにかく小さくしようという意気込みの元でトップシェアを獲得した事例はあるものの、実際のところ、小型化するのにも限界があるのではないかと我に返る方もいらっしゃるのかもしれません。いったい製品はどこまで小さくなっていくのか。

この問いに関してはすでに答えが出ています。

小型化できるサイズの限界

電子部品を例に挙げると、定格(性能など)の関係から小型化が限界に近付いていると発表されています。どうしても本体を小さくするには、構成するパーツを小さくするだけではなく、業界の標準規格なども新基準の制定も必要となるケースもあります。

2023年時点 部品内蔵基盤の分類(KOA株式会社より)

内臓受動部品汎用表面実装部品金版内臓薄型部品厚膜印刷素子など
部品の厚み0.23mm/0.33mmなど0.13mmなど0.02mm前後

対策がないわけでもない

スマートフォンやタブレットなどの小型情報端末は、寸法の制約があるため、その中に入りきるように、バッテリー容量の確保も行う必要があり、部品の小型化もこれと両立が必要です。

これまでは、部品内蔵基盤を使うことで小型化、薄型化を図り、インピーダンス(電流の流れにくさ)を低減させたり、配線経路の最適化による信号伝達の改善などを行ってきました。今後も基盤に組み込む形ではなく、一体型にすることによって、小型にすることが可能です。もちろんその際には、人間の手だけでは困難なため、精密加工機器が必須になります。

小さくなることの欠点

  • メンテナンスが非常に難しくなる
  • 部品が一体型のため部品の取り換えが出来ない(修理不可)

結果的にサイズに限界値はあるのか?

3DプリンターやTPPの分解能を超えるものは造形できません。部品そのものも、それを入れるためのケースも、現在ある機器を使って実現することは可能であり、肉眼ではその状態を確認できないレベルです。SEMなど電子顕微鏡でよく拡大してみると、正確、精巧に造形されていることが分かります。よって、製品を作るために利用する機械の精度が実現可能な限界と言えます。

しかしながら、現実問題で小さすぎても人間が私生活などで扱うには不便なため、製品として送り出す場合は、全体像が人間が容易に視認できるレベルまでに拡大されていることは必須であると考えられます。(内部構造はこの限りではありません。)

TPPとPμSLどっちのほうが良いか

3Dレーザーリソグラフィー(TPP)とプロジェクション・マイクロ・ステレオリソグラフィー(PμSL)については、それぞれの長所が異なります。

TPPはより米粒大の精密な加工に適していますし、PμSLについては、指先~手のひらサイズの造形に適しています。

TPPが活躍できるとされるのは、先述した電子分野の基盤やモジュール、医療分野では細胞の研究などを中心となっています。

PμSLは造形スピードが速いため、試作品をすぐに出力することができます。2023年1月ごろに、PμSL技術を駆使して、ヒロセ電機株式会社が産業用コネクタの最小化に成功しています。

このことから、電子部品に必要な部品の製作での活用は製品評価も早くでき、工数を削減しつつ、幅広い分野において活躍していくことが出来そうです。

まとめ

ここまで小型化について語ってきましたが、3D造形技術がどこまで技術の進歩の後押しをしてくれるのか非常に期待が高まったでしょうか。どこまで小ささは追及できるのかと疑問を持たれる方にも情報を提供してきましたが、小さくすることに限界があるということが製品によっては存在するという現状が分かっていただけたかと思います。

これを参考にして、3Dプリンターを購入するときには自分はどのくらいまでのサイズを作ることが出来れば満足なのか、精度はどのくらいであれば業界でトップクラスなのかなどを考えながら、現実的で良質な限界値と照らし合わせて検討してみてください。

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