アメリカで人気のものづくり系サイトDesignworldのポッドキャストで、BMFのCEO John Kawolaはゲストスピーカーとしてインタビューされました。
インタビューではBMFの誕生から、さらにこの先のことまで語っています。
超精密3D造形の展望についてのダイジェストの記事と共にお楽しみください。
3Dプリント産業の問題提起(社会現象など)
風力発電で使うブレードのような巨大な部品から、2ミクロンといった小さな部品まで、3Dプリンターが扱えるサイズのスケールの大きさには、目を見張るものがあります。マイクロスケール3Dプリントは、ミリスケール、あるいはサブミリスケールで部品を作ることがコンセプトで、この技術は産業用として商業化されつつありますが、マイクロファブリケーションへの誤解があります。
従来のマイクロファブリケーション技術の多くは、3Dプリンティングではありません。エンボス加工やエッチング、フォトリソグラフィーなどの2.5次元の製造技術です。しかし、微細部品の用途は、半導体やMEMSの領域が挙げられます。
BMFプリンターの誕生
立体造形の一種であるマイクロスケール技術、通称プロジェクション・マイクロ・ステレオリソグラフィー(PμSL)は、10年前から利用可能な技術と言われており、ボストンMITの教授であるNicholas Fangが開発しました。
Nicholas Fangの3Dプリント産業での戦略は、3Dプリント/アディティブ・マニュファクチャリング分野への進出を試みることでした。コンセプトは、市場にある他のDLP方式の3Dプリンターと同類のPµSL方式を採用することでした。BMFシステムでは光源を非常に細かい解像度まで絞り込み、動きを制御することで精度を確保しています。
マイクロスケール3Dプリンターは、製品開発、製造、生産を行う高価値産業の市場セグメントに適合できる品質と、分解能や寸法精度はミリ単位、電子コネクターのような公差ではミクロン領域が要求されます。
マイクロスケール市場向けに設計する際の課題
マイクロスケールの部品における設計上の課題は、マクロの部品とあまり変わりません。物をどうつくるか、成形、機械加工、プレスなどの方法を常に考慮しなくてはなりません。そのため、小さな部品の製造は難しく、高価であることが現実です。
マイクロスケール3Dプリンターのユーザの多くは、プロトタイピングのために使用しています。2年前までは安価なマイクロスケール3Dプリンターでは1対1でほしい解像度やディテールを得ることができませんでした。現在は、ユーザの約3分の1が何かしらの生産を行っています。中には金属加工やプレスよりも、3Dプリントしたほうが低コストという事例もあります。
マイクロスケール3Dプリンター開発での問題点
プラスマイナス5ミクロンの公差が求められる中で、高い公差を確保し、プラットフォームを構築することが課題の一つでした。樹脂の上に画像を載せて部品を作ることができるプラットフォームが必要でした。1回の照射範囲を超える大きなパーツを作る場合はそのプラットフォーム自体も動きます。
光源の動きとプラットフォームの動き、そのすべてプログラムする必要がありました。さらに材料の収縮にも対処が必要です。複雑な要因を考慮して公差を決定しなければならないのです。
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DLP方式 高精度な光学系が必要
10ミクロンの光学解像度というのは、材料タンクに投影される画素の大きさです。市場にあるほとんどのDLPシステムは吊り下げ式で、像は液体を通して下から投影されるようになっています。
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DLP方式の問題点
レイヤーの厚みをコントロールする必要がある。(レイヤーの厚さ10~20ミクロン)
すべてのDLPシステム、すべての樹脂ベースのシステムでは、光を投下して樹脂を反応した時に、熱が発生してしまる。(3Dプリンターの課題) -
熱のコントロール
<改善前>
熱をコントロールして、冷却しながらプロセスを進めるという方法を開発したが、寸法精度の維持の観点から熱の利用は困難と判断されました。
ボトムアップは樹脂の層が薄く熱の影響を受けやすく、熱がこもるためです。<改善後>
トップダウン方式に変更後、樹脂層がヒートシンクの役割を果たすので、熱は蓄積されない。 -
素材のエコシステム
約5年前から素材のエコシステムは進化しています。現在は3Dプリンティング企業だけでなく、各企業に材料科学部門があるわけではありません。Evonik Industriesなどのあらゆる大企業が参入し、3Dプリンティング推進のための材料を開発しています。
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自動化について
自動化は付加価値を生むものであれば重要ですが、人が持つコストや柔軟性とバランスをとる必要があります。例として人間は床に落としたものを拾うのに対し、ロボットは床に落としたものを拾いません。そうプログラミングされていないからです。そこにバランスがあるのです。
事例として20台の機械に対して人は1~2人です。このように自動化は助けになるとは思いますが、機械の自動化の点だけにフォーカスすれば、まだ機械導入の余地があると思います。
マイクロスケール3Dプリンティングの未来
ここ10年間で、ほぼすべての3Dプリンティングプラットフォームにおいて、材料が大幅に改善されました。
今後、産業用向けの3Dプリンターとして重要視されているのは、すべてのシステム、材料、ソフトウェアが工場に導入され、他の製造技術・装置と直列または並列に配置され、企業が持つ品質管理システムと連帯できるように、製造プロセスを考慮して設計されている必要があります。