製造業における課題と3Dプリンター導入による改善事例

製造業3Dプリンター
最先端情報製品|3Dプリンター目的|コスト削減

人員、製造コストを削減し利益の最大化を図る動きは歴史的に見ても顕著ですが、現在は少子高齢化の問題も抱える日本の中で、より生産効率を上げるのは、製造業においていまだ完全には解決されていないのが現状です。大型のロボットにより、切削を行うにもロボットの導入やメンテナンスコスト、製造過程ごとの人員確保も必須となり、製品生産の工数が多くなればなるほどこれらに割く費用は肥大化していきます。これがもたらす最大のデメリットが人員の精神的負荷であると考えられます。これにより生産効率が落ち、製品精度も低下することが考えられるため、現状の課題は、いかに簡易的に低コストで早くものを造り上げるかということだと思います。本記事では、さまざまな分野における事例を踏まえて、3Dプリンターを使った解決策を提唱していきたいと思います。

製造業における課題

給与総額(人件費)

2021年発表の2020年時点までの経済産業省の統計によると、製造業における労働生産性が2019年から2021年との比較で2.3%上昇しています。給与は1.5%上昇となっていますが、近年円安が進行しており、日本円の価値は前年度より低迷していることから、実質的上昇とはいえず下落しているとなっています。しかしここで製造業だけ見ると、人員に対する売上高を見ると人員は2万人ほど増加しているのに対し、売上高は20万円ほど低下しています。人件費の支出が上昇しているのに対して、生産に対する売上が低迷していることが挙げられますので、実質的に業績は悪化していると取れます。東洋経済によると、日本人の生産性は現在では世界的に見て小さく、ITなどによる業務の簡素化が遅れているため、人員を増やす結果を招いたと推測します。

生産速度

GDPの7割が中小企業であり、そのほとんどがIT化が進んでいないため、生産の効率、速度を上げることができていない状態、いわば旧来の延長線上にある最中ということです。

業務の簡素化・労働時間

ロボットやAIの導入ができていないことから、過重労働が問題視されることが多々ありました。業務が複雑になればなるほど、人員の教育に時間やコストもかかるため、生産性に響くだけではなく、労働時間の長時間化につながります。またヒューマンエラーがおのずと起こりやすくなるというデメリットがあります。

設備維持費・試作品製作等費用面

設備の維持や、試作品の作製にはコストがかかります。それらは利益に貢献することは決してありませんが、純利益を削ぐリスクは十分にあります。これらの対策に関しては製造業においては重要視、問題視されている部分です。

在庫リスク

需要と供給の均衡というのは非常に難しく、できれば利益を上げるために定価で販売を行いたいところですが、売れ残りがあれば値下げも考えなければなりません。そうなれば純利益は低下し、最悪の場合は在庫をそのまま抱えることになります。また在庫のそれぞれを管理する費用も必要となります。

小型化への対応

現在は携帯機器や医療器具など様々な分野で小型化が急速に進行しています。これらを作るには非常に時間とコスト、また技術的な問題で材質との相性などのこともありますので、競合他社と張り合う以上時間はあまりかけていられない点となります。確かに小型化が進むと従来より利便性が増す反面、技術的な問題が障壁となります。
上記で取り上げた解決策はあるのか?
これらすべてをとはいきませんが、大幅に改善が見込める方法はあります。それは3Dプリンターを導入して自動で造形することです。必要なものは、3Dプリンター本体と材料、3DCADデータのみですので、初期費用さえあれば環境を整えることは可能です。費用とはいっても、一般的な企業における製造設備を作る費用に比べると小規模なもので、1台当たり数十万円~数百万円程度という単価になります。

3Dプリンターの導入事例

製造業

金型の製造を主体として3Dプリンターの導入が早い段階で進行しています。現在、メンテナンスや作業における補助治具など3Dプリンターにおける活躍の場の拡大を図る企業もあります。主に、一度しか使わない部品などにはコスト面では大きな力を発揮している。また物体を高精度3Dスキャンして、欠損部分を3Dモデリングして補い、デジタル復元を行うといったことも行われています。これらを保管しておけば、必要な時に何度でも造形を行うことが可能です。(2022年8月26日時点ineedより、産業用機器のメンテナンス・修理、クラシックカーの整備を3Dプリンターを使った業務が存在しています。)
試作品の製作に3Dプリンターを取り入れる企業も少なくはありません。試作品製作を3Dプリンターを導入して行うことで、完成までに要する時間とコストを削減できます。

教育機関

現在は中学・高校・大学などの教育機関で取り入れられるようになってきています。主に物体の構造を理解するため、デザインの授業の一環で立体造形を行う際に使うといったことなどに用いられています。理数分野において、2次元ではイメージしにくい領域では、3Dプリンターで作製した立体を用いて説明を行うことで、より理解度を深めるように有効活用されています。また、創造を形にできることを体感することで、生徒や学生はモノづくりの関心を深めていくことでしょう。

建築系

海外を中心として建設模型の製作に3Dプリンターがすでに活用されています。住宅、オフィスビルなどの建築などで3Dプリンターを使うことで、施工費用が安価に住みます。また建築スピードが速く、一般住宅程度の規模であれば24時間で施工完了します。カラクリとしては、3Dプリンターを24時間稼働させる、建築物が単純構造という二点があるためです。また従来の建築方法で必須の鉄筋や枠組みが不要であるため施工速度の速さを実現できています。アメリカにおける180~240m2の住宅(日本の家は戸建て平均30~40坪と99m2~132.4m2)が45万円で建造できますので、日本の規模となるともう少し安価になると考えられます。ベルギーでは世界初の2階建て住宅も建築されています。日本では建築基準法の元、鉄筋が入っていなければならないという決まりがあります。これは対地震に対するものです。コンクリートは地震の引っ張る力に弱いことから鉄筋が必須なのです。その観点から日本での3Dプリンター建築は厳しいとされていますが、材料のプリントによる建築は今後導入される可能性があります。現在では3Dプリンターで使える材料を開発している日系企業が増加傾向にあるのは事実です。

医療機関

歯科医療や歩行補助具、治療用具の製作、手術前の練習用用具などで3Dプリンターが活躍しています。歯科医療では、総入れ歯の義歯の製作には2週間~1か月かかるといわれています。国民健康保険適応で総入れ歯は1つ8000~9000円程度かかります。これを3Dプリンターを導入することで数時間で製作が可能になりました。現在では一人ひとりに合わせた異なった形状の歯科技法物をカスタマイズして生産できています。また人口骨や脳や肝臓などの臓器を3Dプリンターで製作し、手術の説明に使うことでイメージがしやすい教育方法を実現しています。現在では、シリコンの人工心臓の作製を試みており、3Dプリンターによる人工心臓もそう遠くない未来に実現しそうです。

おもちゃ業界

安価な機種が販売されており、それはカラープリントも可能となっています。子供用のおもちゃを製作するのは容易です。必要なものは材料とSTLデータのみです。また無料で配布されているデータも存在しますので、それをプロットして立体パズルを作製している人もいます。またフィギュアは実際はエポキシパテや粘土などを使って造形するのですが、これでは1体作るのにかかる所要時間は180時間です。1日あたり2時間作業するとすると3か月かかる計算です。3Dプリンターだと数時間で精密に正確に作製することができます。このように費用だけではなく、時間的な制約からも解放されるため、3Dプリンターは積極的に活用されるようになってきています。

航空宇宙業界

金属材料や炭材料、高性能樹脂材料など数多くの先端素材が使われる航空・宇宙業界では、長期的に使えて特に衛星は絶対に停止しないことが念頭に置かれています。複雑な形状を形どるには3Dプリンターが有用で、すでに大手航空機メーカー製の機材に搭載されている新型エンジンには3Dプリントされたエンジンの部品が300点以上も使われています。軽量かつ高強度を実現できるメリットはあるのですが、金属製3Dプリンターが高価であることから、現在日本では取り入れられていません。大きく注目を集めているのは米国、英国、ヨーロッパであり、機体にはチタンが採用されています。3Dプリントにより製作時間やコストの削減に寄与し、メンテナンスの効率も上げています。

個人

個人で利用しやすいといわれているのは熱溶解積層方式の3Dプリンターです。価格も安価です。個人で3Dプリンターを使ってグッズの製作・販売を行う人も増加しており、DIYへの関心も高まっています。

3Dプリンターのメリット

  • アイデアを簡単に具現化できる
  • 開発期間・コストの削減を実現できる
  • 品質の向上を図れる
  • 切削では作れない形の造形が可能
  • 追加工が不要
  • 情報流出のリスクを防ぐ
  • 必要なときに、必要な場所で、必要なだけ製作できる
  • 余分な在庫を持つ必要がない

造形方式ごとのメリット

  • 光造形(DLP方式)
    細かいパーツの高速造形に適しています。
  • PμSL方式
    BMF独自の光造形方式であり、高速かつマイクロスケールのものを作ることに特化しています。補聴器の部品のような金属部分の代替品を作製した実績もあり、強度面でも期待できます。
  • 光造形(レーザー方式)
    微細で滑らかな造形物を作製することに適しています。
  • 熱熔解積層方式(FDM)
    一般消費者向けに流通している方式で、大型のものを作ることに向いています。小型のものを作るのは苦手としていて、安価でシンプルな構造をしています。
  • 粉末焼結方式(SLS)/(SLM)
    鋳型のような耐久性が求められる製造に向いており、金属の造形も可能です。
  • インクジェット方式
    変色、変形しやすいというデメリットを持っていますが、ヘッドから細かい樹脂を出すため、小さな積層ピッチで滑らかな造形物を実現できます。
  • 面露光方式
    造形スピードが速く、製品の表面が滑らかになりやすいです。しかし、光の照射範囲を広げると解像度(造形物における密度)が落ちてしまうという欠点があります。
  • 粉末接着方式
    旧来から一般家庭にあるようなインクジェットプリンターと同じように動くのが特徴で、粉末に着色することで、フルカラー造形を行うことができます。しかしながら強度がないため、ワックス処理は必須です。
  • MEX / 材料押出法
    製品が高い耐久性、耐熱性を持つことができるのが特徴で、試作品や治具、簡易型の造形に使うことができます。小型のものを作ることには向いておらず、造形速度は遅いです。
  • マテリアルジェッティング
    細かなパーツを作製でき、印刷物の表面はなめらかです。造形速度が遅く、強度もあまり期待できませんが、精度が求められるものを作ることができます。
  • バインダージェッティング
    速さに優れた造形方法で、着色が容易な特徴を持っています。フィギュアなどの製作に向いていますが、強度はあまりなく、マイクロスケールのものを作ることはできません。

3Dプリンター業界全体の今後

3Dプリンターの需要は増加する

今後、3Dプリンターの需要は高まり続ける見込みです。ただ、3Dプリンターの造形方法の技術革新が進んだことにともない、用途によって最適な造形方式が選択されていくことでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大により、3Dプリンターを購入し、自宅で個人用グッズを製作するユーザーや、小さな子供向けの玩具やパズルを自作する家庭が増えてきました。

3Dプリンターは、製造業での導入は進んでおり、製造業で使用する工作機械の位置付けになりつつあります。最終製品の製造に限らず、試作品や治工具を製作する際に3Dプリンターの使用に切り替えるなどしており、業種ごとの3Dプリンター導入は着実に進んでいるといえるでしょう。

ただし、3Dプリンターには課題もあります。例えば、造形に時間がかかり大量生産には不向きなことや、まだ新しい製法のため使用する箇所によっては品質などの面から法的な規制をクリアする必要があることなどが挙げられるでしょう。

3Dプリンターの市場拡大と可能性

3Dプリンターは製造業をはじめ、会社から個人まで幅広く利用されています。3Dデータをもとにして立体的に物体を製作できる多様性から、多くの業種や分野でも導入が進められています。

物体の造形方法や使用する材料によって効果の程度は異なりますが、この技術がさらに発展した場合、製品の開発にかかる時間やコストの削減に加え、製作にかかる材料費や人件費、輸送費などのトータルライフサイクルコストの削減が期待できるでしょう。

ただし、現在の3Dプリンターは製作に時間を要するため、製品そのものを大量生産することには不向きです。実際、国内の製造業でも金型や試作品を短期間で製作する工作機械の一部という立ち位置からは脱却できていません。

とはいえ、3Dプリンターの開発はどんどん進んでいます。親和性の高い医療現場へは積極的に導入されているため、人工心臓や内臓が3Dプリンターで作られるのも、そう遠い未来ではないのかもしれません。

今後、3Dプリンター市場が拡大し、より多くの人が気軽に使えるようになる可能性もあります。使い道が広がりゆく3Dプリンターに、ますます注目が集まることでしょう。

弊社プリンターが生かせる場所

小型かつ、従来では金属のような高価なものが材料だったものを作製していく場合において、すぐに数時間で試作が作れるという点では強みとなります。短時間で作成してみて、材質に不備があれば別の材質を試してすぐに作製できますので、コストなどの諸費用を最大限に抑えてより良いものを生み出していくことが可能です。現段階では、細胞研究のための足場や補聴器の金属部品の代替をはじめとして、医療分野においても活躍しています。製造業だけではなく、幅広い分野での活躍ができることが期待でき、ローコストで運用し続けられるのは最大のメリットではないでしょうか。

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