近年セラミックス科学技術は大きく進歩し、産業構造の変化に対応してきました。セラミックスはその独特の特性、例えば熱的性質、力学的強度、電気磁気的性質、寸法精度などから多岐にわたる用途で活用されています。
戦後、日本の産業構造の変化に対応して、セラミックスの科学技術は大きく変化しました。これは、産官学の協力により学術的にも産業的にも世界の最先端のレベルまでに進歩しました。最近、我が国を取り巻く社会情勢は大きく変化し、従来の産業振興のための材料研究から、地球環境や福祉、国際性を考慮に入れた材料研究へと変化が求められています。
セラミックスの機能は多岐にわたり、進歩は目覚ましいものがあります。力学的機能としての高強度・高硬度は、研削工具や切削工具に利用されています。また、セラミックが耐熱性・耐化学性に優れているため、ガスタービンや熱交換器など、高温で作動する機械を従来よりも高温で運転することで、効率を高めて省エネルギーを達成する動きも見られます。
これらの情報から、セラミックスに関する注目度は、その多機能性と科学技術の進歩により、世界的に高まっていると言えます。
今回は次々と進化を遂げるセラミックス加工技術について、微細化にフォーカスしてご紹介していきたいと思います。
セラミックス技術のトレンド
- ファインセラミックス材料は半導体産業の好調や5G通信関連の広がりに伴い、その世界市場では安定的かつ堅実な需要が見込まれています。特に、5G通信や電気自動車の普及が進む中で、放熱部材関連の需要が増えることが予想されています。
- ノースイースタン大学の研究チームによって開発された新たなセラミックス材料は、薄くて複雑な形状への加圧熱成形が可能であり、これにより低コストかつ高速で薄型で複雑な形状のセラミックス材料を成形することが可能となっています。
- セラミックスの付加製造(AM)分野では、技術的なセラミックス部品を製造するためのステレオリソグラフィーシステムが進化し続けています。このシステムは、より大規模で、より高速な生産性を持つように進化し続けています。弊社の3Dプリンターによる造形技術もこれに該当します。
セラミックスの長所と短所
金属と比較した場合のセラミックスの長所と短所は一般的に以下の表のようになります。
空欄については種類やグレードにより異なります。
特徴 | 金属 | セラミックス |
---|---|---|
融点 | 中 | 高 |
耐熱性 | 中 | 高 |
熱伝導性 | 高 | 中 |
電気伝導性 | 良 | |
耐衝撃性(機械的) | 良 | |
耐衝撃性(熱的) | 良 | |
耐薬品性 | 良 | |
硬度 | 中 | 高 |
耐摩耗性 | 中 | 大 |
成形加工性 | 良 | |
軽量性 | 小 | 中 |
表から読み解くと、融点や薬品耐性、摩耗について強く、比較的軽いということから、利便性に優れている反面、衝撃には弱いという一面があるため、柔軟性がないために持っている欠点もあるものの、分野によっては活躍が期待できる素材となっています。
セラミック製品の微細化によるメリット
機能性の向上
微細化により、材料だけでは得られない新たな機能を獲得できます。たとえば、多数の電極を細かく積層することで、大きな静電容量を持つ小型のものを作ることが可能になります。
精密加工
微細化技術は、非常に小さな部品や複雑な形状の部品を製造するために必要です。これにより、より高度な製品設計と機能性を実現できます。
材料利用の効率化
微細化により、必要な材料量を削減し、製品の軽量化を実現できます。これは、コスト削減や環境負荷の軽減につながります。
3Dプリンターにおけるセラミックの微細化技術の応用例
セラミックは加工が困難な素材として知られていますが、近年では3Dプリンターを使用した造形の需要が急増しています。弊社と提携しているBMF社は、高精度な造形が求められる状況で、PµSL(Projection Micro-Stereolithography)という独自の光造形技術を開発しました。これにより、樹脂だけでなくアルミナセラミックスの試作も可能となっています。
一方、キヤノンは焼成時の縮みを抑えた3Dプリンター用材料を開発しています。この新技術は、自動車、医療、産業機器、航空などの先端産業でのセラミックス部品の使用可能性を大きく拡大しています。
それに加えて、Lithoz社は独自の技術であるLCM製法を用いて、セラミックの光造形ともいえる、高性能なセラミックパーツの3Dプリンターを開発しています。
3Dプリンターの手軽さが技術進歩を進める
セラミック加工ができる3Dプリンターの誕生により、硬質で加工が困難だったセラミック製品は、多種多様な形状にプリントアウトできるようになりました。その精度は数マイクロメートル単位という世界で、人の視認できる領域をはるかに超えた精度です。
その滑らかで正確な仕上がりは、改良が進められており、現在では精度を担保したままの高速化も実現しています。
これにより、待ち時間が減り、実物をすぐに確認しながら3DCADの修正が早急に行える環境が整うため、非常にストレスの少ない環境で製品設計が行えます。
小さな違いが大きな結果を生む
3Dプリンターは一般に大量生産に向いておらず、複数造形した場合は一般的な工場の生産工ストより高額になってしまうケースが多いです。しかしながら、中空構造や内部構造や外部構造が複雑な造形となると、従来の技術では工数や鋳型の準備など様々なところでかかるコストを総合すると、結果として3Dプリンターのほうが安く、早くできる場合があります。
こうした3Dプリンターの得意とする分野を理解して、従来の方法か3Dプリンターでの造形を選択するかを考えて、求めている結果を得られる方を選んでいきましょう。
まとめ
セラミックス科学技術は、その多機能性と科学技術の進歩により、世界的に注目が集まっている分野であり、特に微細化技術や3Dプリンターによる造形技術の進歩は、その可能性を一層広げています。これらの技術を活用することで、より高度な製品設計と機能性を実現し、材料利用を効率化することが可能になり、結果としてコスト削減や環境負荷の軽減につながります。しかしながら、3Dプリンターが得意とする分野を理解し、従来の方法と比較して最適な選択を行うことが重要です。