日本が世界初の人工呼吸器を3Dプリンターで実現。世界で人を救いたい

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2020年度よりウイルスの感染症から肺炎が多発し、重症化してしまうケースがある。この場合、呼吸困難となるため、医療機器としての人工呼吸器などが必要とされています。COVID-19に対する治療薬は2023年時点でも後遺症に対して、効果が保障された治療方法が確立されていないことを受けて、人工呼吸器への需要が高まっています。

3Dプリンターによる人工呼吸器の製作

2012年に人工呼吸器を含む医療機器の発明から特許を取得していた、石北さんの研究が注目を集めていました。もともとは小児科医として勤務する傍らで研究を行っていたようです。

COVIDVENTILATOR(コーヴィッドベンチレーター)という名前で立ち上がった3Dプリンターを活用にしたプロジェクトがあります。

2020年時点ではプロジェクトのfacebookページは400人以上の方々が集まる中で、樹脂でプリントされたパーツの写真が次々にアップされていました。

10年以上前から研究されてきた嗅ぎ注射器が始まりで、元々は、てんかんの治療の時に、麻酔が必要で、この時の注射の準備を短縮化するのが狙いでした。

主に人工呼吸器に麻酔入りの注射器を取り付けて、ガスを吸引させる手法です。

2020年当時に3Dプリントされたものは、人工呼吸器の弁を構成する4つの部品(弁、ボディ、圧力調整ねじ、螺旋ばね)です。

これらは人工呼吸器の心臓部ともいわれる、非常に重要で細かな形状のパーツとなっています。

人工呼吸器は呼吸不全となった患者に使うことが一般的です。

主に胸郭外部陰圧式(外側から胸郭の拡張を促す方法)、気道内陽圧式(軌道から直接空気を送り込んで、肺を膨らませる方法)に分けられます。

3Dプリンターで作られた人工呼吸器弁は陽圧式の手動式人工呼吸器の役割を担うものです。

これらは電源がない場所では、コンプレッサの代わりに、足で踏むタイプのふっとポンプも使用できるように作られています。

宇宙での医療

電源がなくても使用でき、手のひらに乗るくらい小さいサイズの嗅ぎ注射器は、宇宙での長期ミッション中でも、麻酔が必要な場面に適応できるようにするため、はじめはJAXAのプロジェクトへ志願したのですが、薬事未承認の医療器具は宇宙船に持ち込みが出来ないという壁に当たりました。

そこですでに3Dプリンターを保有しているNASA(NASA Ames Research Center, Made In Space)へ3DCADのデータのみを送信することで医療器具を提供するというスタイルを提案したところ、2015年に共同研究が認可されました。

2年間の準備期間を経て、2017年に嗅ぎ注射器のコアパーツである人工呼吸器を、無重力の中で、3Dプリントと動作実験を行い、見事成功させました。

これにより、インターネットと3Dプリンターが揃っていれば、医療器具を提供できると証明したのです。

人工呼吸器の3Dモデルデータの無償提供

人工呼吸器の研究を行っていた石北さんは、フランスの医師からコンタクトを受け、3Dプリンターを使った人工呼吸器実現のために、製造データを無償提供することに賛成していました。

しかしながら、日本はもとい、フランスなどの各国では、3Dプリンターで造形された医療機器は、医療機器としての承認を受けていない関係から、頭を悩ませていました。

そこでFacebookを通じで協力者を募集しました。この投稿が多き反響を呼び、医療機器開発の承認などに詳しいエキスパートが集結して、プロジェクトが動き出したのです。

現在ボランティアの一環としてのデータ無償提供はいったん終了していますが、石北さんは「必要な人のもとに必要なものが、いち早く届くことを願ってやまない」と語っています。

4つの課題の打開

3Dプリンターで造形する場合の医療器具に対して現段階である課題は次の4つになります。

  • 仕上がりのばらつき
  • 連続使用時の耐久性
  • 医療現場での安全性
  • 医療器具としての認証が取得できていない

仕上がりのばらつき

3Dプリンターで製造する場合は、3DCADの質、3Dプリンター本体の性能や設定、素材などにより、出力されるものが異なる。求められているものは、3Dプリンターでモデルを作ることではなく、最終製品を作製することであるため、品質への注目は著しい。

連続使用時の耐久性

主要部品の破損や、性能劣化がなく、長期的に正常に動作することを実証する必要があります。

医療現場での安全性

人工呼吸器は、患者の呼吸を一定にするためのものではなく、自発呼吸できない人のために、強制的に肺に対して酸素を送りこんだり、排出させたりするものです。医師や看護師、臨床工学技士の方々が、圧力計などを用いて、患者の様子を常に観察しながら3Dプリントされた部品を操作して、空気圧を調整します。仮に操作ミスをして、致命傷にならないためにも、起こりうるトラブルを洗い出して設計に臨む必要があります。

医療器具としての認証が取得できていない

医療現場で正式に3Dプリントされた器具を利用するには、規制当局からの認証を取得していることが前提となります。審査には年単位で時間がかかるといわれています。

2020年の患者急増により、人工呼吸器が不足

新型コロナウイルス感染症が世界に拡大したことを受けて、都市部を中心に、医療資源に対する患者数が多く、適切な医療が行き届かない状況になりました。重症化すると肺炎になる恐れもあり、その場合は人工呼吸器の装着が必要となるのですが、患者数の関係でそれが不足し、装着させたくてもできないという事態になりました。先進国でもこのような状況が報道される中、発展途上国ではこれよりもひどい状態になっています。

しかしながら3Dプリンターの医療機器としての認可はまだ降りておらず、近年だされた審査の緩和と、良質な製品の製作が、今後多くの患者を救うカギとなることでしょう。

まとめ

石北さんもコメントしていましたが、3Dプリンターを使うにあたり、やはりどの機種を使うことによって、目的のものを作ることが出来るのかわからないというのが最大の悩みのようです。もちろん各種法規のしがらみなどもありますが、基本的に作る前の段階から、足が前に進まないことがほとんどなのです。

こうした前任者の事例をもとに、各業界の無料相談などを最大限に使って、満足のいく製品を作っていきましょう。

弊社では、造形サンプル品製作を承っており、3Dプリントした実物をビデオ通話や直接お会いしてお見せすることが出来ます。

樹脂やセラミックで造形できるのかと悩んだときには、まずはお気軽に弊社にお問い合わせください。

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